内部監査の品質評価について考えてみる。
内部監査を担当するようになって5年ほど経ったころ、私は自分たちがしている内部監査が適切なのか気になってきた。そこで、同業で同等規模の企業と内部監査部門同士の情報交換をしようと考えた。声をかけた3社がいずれも協力してくれて、順次個別に実施した。それで分かったのは、同じ「内部監査」と称していてもその活動は千差万別で、多少の情報交換では比較さえできないということだった。
3社のうち1社は、数年前に始まった内部統制報告制度への対応に追われて、本来の内部監査どころではないという状況だった。私のところは、内部統制報告制度対応と内部監査の比率は1対3ぐらいだった。同業で同等規模、生産品目は違うが、事業全体としては特別な違いはないのに、ずいぶん違った。他の2社も、内部監査の単位が異なり、私たちが3年周期で全部署・全子会社を回るのに対し、彼らは毎年2-3のテーマを決めて、それに関連する部署・子会社を一巡するという。
年度内部監査計画を策定方法や個別監査の実施通知から準備・往査の手順、内部監査の結果整理から指摘・提言をまとめて報告書にまとめる流れについて、自分たちのやり方を説明しても、彼らのやり方を説明してもらっても、お互いにきょとんとしてしまう。何から何まで違いすぎて、なぜ、そのようなやり方をしているのか、理解できないのだ。
「グローバル内部監査基準」は、内部監査の品質評価について、5年に1回の外部評価と年1回の内部評価を必須としている。しかしながら、それはなかなか難しい。私が内部監査部長を務めたとき、人件費を除く毎年の経費予算は2-3百万円だった。外部評価は費用が数百万円もかかるので、そのような内部監査部門には大きすぎる負担である。
一方、内部評価については、自分たちでできるので、直接には出費はない。その手順は、日本内部監査協会から発行されている「内部監査の品質評価マニュアル」に従えばよい。内部評価の手順をこなすことはできるが、効果的に行うのはなかなか難しい。
外部評価を安価に済ませる方法はないわけではない。外部評価を、少人数かつ短期間で行うのだ。外部評価を未経験であれば、おそらく問題の発見は第三者には難しくない。短期間でもいくつかの改善点の指摘ができて、一定の成果を得られる。それでは物足りないというレベルに達したあとで、人手と時間をかけた本格的な外部評価を実施するのだ。
内部評価についても、少人数の内部監査部門でも実効性を上げることはできる。部員以外のメンバーを1名でも加えるのだ。そのメンバーを毎年交代させれば、毎年新たな視点を加えて監査することができる。そのメンバーは、評価の全体に参加する必要はない。計画策定と結果評価の段階で加わり、新たな視点を提供すればよいだろう。
少人数の内部監査部門の場合、外部評価は一度もできていないという話を聞くことが多い。まず一度、簡便な方法でよいのでしてみてはどうか。あるいは、社長か内部監査部門長が交代したときなどにしてはどうか。新任社長が内部監査に不満を感じるころには任期は終盤になる。この記事をお読みの経営者や内部監査部門長の皆さんは、どうお考えだろうか。
※「グローバル内部監査基準」は新しく、2025年1月から適用されている。それ以前は「内部監査の専門的実施の国際基準」のほか「専門職的実施の国際フレームワーク」(略してIPPF)の中に分散して、基準と同じような内容が含まれていた。
新しい「グローバル内部監査基準」に基づく「内部監査の品質評価マニュアル」の最新版は2025年6月(ブログ掲載直後!)に発行されたばかりだ。6月の初版は不備があったようなので、9月の初版第2刷を購入されたい。
(ブログ 2025/6/4~2025/6/14)
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